ネット誹謗中傷による名誉毀損を解決し、日常を取りもどす方法とは

名誉毀損と法律 ネット誹謗中傷

インターネットの利用環境が全国津々浦々まで整備され、都市や地方を問わず、PCやタブレット、スマホといった通信機器があれば誰でも光速でコミュニケーションを取れる時代になりました。それに伴い、個人や団体が自己表現できる機会や場所は広がり続けています。

彼らの要望は、商品やサービスを提供している企業はもちろん、数々の政策を打ち出している行政府にも大きく影響しますし、対応を誤れば「炎上」という不本意な形になって現れます。SNSをはじめとした様々な情報発信ツールの威力は、社会基盤を構築する大企業や国でさえ認めているのです。

そのような威力が方向性を誤って利用されるケースがあります。個人や団体の名誉を侵害する行為で、「心無い」というレベルを超え、威嚇、脅迫、犯罪を示唆する類の書き込みまで悪化することがあるのです。

ネット誹謗中傷による名誉棄損とは

 

名誉棄損とは、不特定多数の者に事実を適示することにより、相手の社会的な地位や評価等を低下させる行為を指します。ネット上の行為であっても、この名誉棄損に該当する内容であれば罰せられます。その際、注意しなければならないのが「事実」の認識です。

法律上の「事実」は「真偽」と関係ありません。「真実」が意味する「本当のこと」とも異なります。「具体的に示すことができる内容」であり、抽象性を排除した内容が求められています。その事実が示されていないと、名誉を棄損されているか否かを判断できないからです。また、事実を示しているからといって全てが名誉棄損として認められるわけではありません。あくまでもその内容が相手の社会的地位や評価等を低下させるものであった場合に限られます。

単に相手を罵っただけ、悪口を言いふらしただけ、ということであれば名誉棄損ではなく、侮辱罪が適用される可能性があります。侮辱罪の場合は、事実を適示しなくても、公然と人を侮辱した場合は罰せられるからです。

さらに、具体的に事実を適示しなくても名誉棄損に該当する「意見評論型」と呼ばれるケースがあります。相手に対する意見、批評、論評といったものが、それらのレベルを逸脱した場合に適用されます。

名誉棄損が成立しないケースにも注意が要ります。適示した事実が「公共性」や「公益性」があり、真実であるか真実相当性が認められる場合であれば、名誉棄損を訴えても成立しません。

これらの条件を違法性阻却事由といい、名誉棄損の要件が満たされていても、法的には認められないことになります。政治家の汚職をすっぱ抜いた、公共交通機関が隠蔽した整備不良を暴いた、武器輸出三原則に違反した企業の従業員が内情を告白した等の場合がそれに当たります。

条件の中にある「真実相当性」とは聞き慣れない言葉ですし、理解しにくい法律用語です。平たく言えば、暴露された内容の真偽はさておき、真実だと判断できるような理由や根拠に基づいた内容だということです。

ネット誹謗中傷で名誉棄損が成立した際に問われる責任とは

ネット上での名誉棄損が認められた場合でも、刑事責任と民事責任が発生します。刑事責任としては、刑法230条の1項において名誉棄損罪が適用されます。ここでは3年以下の懲役もしくは禁固、あるいは50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

また、事実の適示ではなく、抽象的な表現で相手の評価や信用を低下させようとした場合は、刑法231条において侮辱罪が適用されます。拘留か科料を受ける可能性があります。名誉棄損罪、侮辱罪とも親告罪であり、被害者が刑事告訴しなければ相手を罰することができません。

さらに、民法上の責任を問う手段として、損害賠償請求があります(民法709条)。名誉棄損に該当する行為や侮辱的な言動等で傷つけられた場合は違法行為として認められるからです(民法710条)。損害賠償請求とは、すなわち、慰謝料請求のことです。また、刑事上、民事上を問わず、名誉毀損で相手の責任を問うのであれば、様々な要件を整えておかなければなりません。

インターネット上の情報は証拠として保全しておき、告訴に備えておく必要があるのです。次に重要なのが、書き込まれた内容を削除する作業です。掲示板やブログ等の管理者に依頼しなければなりませんが、中には応じないケースもあるため訴訟に持ち込む準備が要ります。

ネット誹謗中傷による名誉棄損を解決するには

SNSによる誹謗中傷で苦しんだ在日韓国人女性のケースでは、匿名アカウントで書き込んでいた男性に迷惑行為防止条例違反を適用して罰金刑(略式命令)を出すまで3年もかかっています。

警察への被害届の提出、警察側の受理、SNS運営会社の協力、プロバイダの協力という数々のハードルが立ちはだかったからです。

ネット誹謗中傷を受けたと感じた場合は、早期に弁護士等の専門家に相談する必要があります。弁護士が告訴状を作成することで受理されやすい要件を揃えることができます。

また、告訴状の受理後に弁護士が警察に出向き、その都度、捜査の進捗を検めることで、捜査が後回しにされることを防げるからです。警察が本腰を入れれば、協力企業等も動かざるを得なくなります。

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