「プライバシー侵害」とは、秘密や個人的な事柄を勝手に公開されること
プライバシーという言葉には、「個人や家庭内における個人的な出来事や秘密、あるいはそれが他人からの侵害や干渉を受けない権利」といった意味があります。
つまりプライバシー侵害とは「普通なら他人に知られない事柄を、他人が勝手に公開してしまうこと」と言えるでしょう。個人が自分や家庭内のプライバシーを守ることは憲法に基づいた権利です。
よって、他人のプライバシーを侵害した人物は法律により責任を問われる可能性があります。実際にあった裁判でも、侵害が認められたことで賠償命令などが下ったケースは多いです。またインターネットが普及することで、ネット上でプライバシーが侵害されてしまうケースも増えています。
プライバシー侵害が認められる要件
プライバシー侵害が認められる要件は、主に3項目あります。
1つ目は、公開された事柄が私生活における事実か、または事実と受け取られる可能性があることです。例えば前科や病歴、身体的特徴といった事柄は、個人のプライバシーにかなり関わる部類です。他人が勝手に公開した場合には、心理的・社会的に大きなダメージを受けるでしょう。
2つ目は、上記の事柄が(公開された時点で)誰にも知られていなかったことです。自身で既に公開していたり、以前誰かに公開されていたりした場合には要件を満たしません。
そして3つ目は、公開された事柄が「通常なら誰にも知られたくないもの」と判断されることです。これには、例えば私生活上の恥ずかしい写真や、周囲に隠している過去の経歴などが該当すると考えられます。
「誹謗中傷」とは、根拠の無い悪口で他人を傷つけること
誹謗中傷の「誹謗」には、悪口や陰口といった意味があります。「中傷」は、根拠の無い事柄で他人を傷つけることです。元々は別々の言葉ですが、近年はこの2つをセットにして使うことが多いです。
よって、誹謗中傷とは「根拠の無い悪口で他人を傷つけること」という意味になります。例えば『〇〇(自身の氏名)には犯罪歴がある』とウソの情報を広められた場合、これは誹謗中傷に当たる可能性が高いでしょう。そのウソによって自身が苦しんだり、日常生活で不利益を被ったりする恐れがあるためです。
では実際に犯罪歴があった場合は、「根拠の無い」悪口ではないため誹謗中傷に当たらず、罪には問われないのでしょうか。答えは『NO』です。例えば周囲に『犯罪歴がある』と言いふらされ、かつそれが事実だった場合は「名誉棄損罪」に問える可能性があります。
名誉棄損罪は、誹謗中傷の内容が事実か否かを問わず適用されるためです。そして、周囲に隠していた犯罪歴を広められたことは「プライバシー侵害」が行われたと言えます。プライバシーの侵害そのものを罰する法律はありませんが、民事裁判によって加害者の責任を問い、その代償を求めることは可能です。
プライバシー侵害がネット誹謗中傷に繋がる可能性もある
インターネットの恐ろしいところは、一度アップされた画像や情報がほぼ無限に生き続ける点です。たとえ管理者に削除を求めたとしても、誰かが個人的に保存していれば完全に削除することはできません。
そして、「誰が」「どこで」その画像や情報を目にしているか把握できない点にもリスクがあります。例えば自身の画像を勝手にSNSへアップされた場合、アップした本人は『面白いから他の人にも見せよう』という程度の軽い気持ちだったかもしれません。
しかしそれが悪意ある人物の目に触れると、誹謗中傷(容姿を貶すなど)の言葉と共に拡散されてしまう可能性もあります。つまりプライバシー侵害は、場合によっては誹謗中傷を呼ぶ恐れがあるということです。さらに誹謗中傷が個人を特定する動きに発展し、より重大なプライバシー侵害に繋がることも予想されます。
よってネット誹謗中傷は発見次第対処し、負の連鎖をなるべく早期に止めることが肝心です。インターネットに強い弁護士へ依頼すると、プロバイダへの「発信者情報開示請求」や書き込みの削除要請などを代行してもらえます。個人で行うよりも弁護士を通した方が応じてもらえる可能性は高いため、誹謗中傷やプライバシー侵害の被害を受けたら、ためらわずに相談することをおすすめします。